コラム

【うつ病】薬物治療について①-「うつ病への対応⑤」-

2013年11月11日

薬物治療について①-「うつ病への対応⑤」-

心療内科を受診するにあたって、みなさんが心配に思われることのひとつに、“お薬による治療がどのようなものか“ということがあるのではないかと思われます。

「薬は体に大丈夫なのか?」
「薬による治療を行うことで、薬漬けにされてしまわないだろうか?」
「一旦、薬を飲み始めると、やめられなくなるのではないか?」
「カウンセリングなどによる治療はしてくれないのか?」

確かに、それらの疑問は当然のことかもしれません。
西洋医学以外の分野の人はしばしば、「薬は体の害になるからやめなさい」と言います。
先生によっては、ただ症状を抑えるためだけに、ちょっと薬を使い過ぎてはいないかと思うようなこともあります。
一部の薬には、若干の依存性があります。
薬による治療だけしか行わないと言って、心の関わりを積極的には行わない先生もおられます。
何より私自身は医者になるまでは薬による治療が嫌いで、風邪をひいても、熱が出ても出来るだけ薬なしで治そうとしていた人間で、この世界に入ったときには薬による治療の考え方に一定の抵抗がありました。

しかし、医者となり、患者である人たちのより幸福な治療を考えるにつけて、薬による治療の有用性は無視できないものがありました。
もし、薬がなかったら、人の苦しみはどれほどに続くことになるでしょう。
治療には今の何倍、何十倍の時間を要し、ときには一生治ることなく、その人生に影響を与えることもあると思います。
それほどまでに今の薬は優れた効果を有するようになってきているのです。

うつ病はエネルギーがなくなっている病気ですから、ある意味、十分な休息を図ると回復する可能性を秘めていると思います。
しかし、中等度~重度のうつ病のレベルにまで陥ったときには、一体どれだけの休息が必要でしょうか?
薬を使った治療を行っていても、一般的には少なくとも数ヶ月から半年程度の休息は必要とします。
もし薬を使わなければ、数年?
それとも、十数年でしょうか?
いや、その回復しない期間に悲観的な考えがさらに悪化し、落ち込みがひどくなり、回復するのを待ち切れずに、自殺することを考えてしまうかもしれません。

統合失調症という病気の話はまた別の機会に譲りたいと思いますが、もしこの病気に薬を使うことがなければ、その悲惨さはみなさんが悪い意味でイメージする精神病院の姿そのものです。
それが薬の進化に伴って、回復レベルは目を見張るほど変化し、社会復帰できる可能性は高まってきています。

何事もバランスです。
薬だけに頼る治療は、人間の心を見ていないところがあり、ときに問題を引き起こします。
しかし、全く薬を使わない治療は、その人の人生を考えるとき、かなりの不利益をもたらすことになります。

心の問題には話による関わりを行う。
心の問題から生じた脳の故障には薬による治療を行う。
バランスのとれた治療が、現時点では人間を最も幸福にする治療ではないかと思います。

次回は、薬の治療に関する様々な疑問についてお話をしたいと思います。

 


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