コラム

いかにして拒食症の治療をスタートするか?①

2014年01月16日

拒食症の人はほとんどの場合、家族に付き添われて病院を受診します。
なぜでしょうか?
それは家族が心配して連れてきたからで、本人は病院に行かなくてはいけないという病識に欠けていることが多いからです。
あるいは、何とかしないといけないという気持ちを持っていても、一人で受診する不安があって家族についてきてもらうんですね。

一般的には、病院に来てもらった時点で診療への合意があり、治療がスタートします。
しかし、拒食症の人の場合、病院に来ただけではまだ治療のスタート地点からは程遠いところにいます。
それは病気の自己にマインドコントロールされていて、家族の言うことも医者の言うことも従うことができない状態にあるからです。

では初めて病院に来てもらったとき、診察でなすべきことは何でしょうか?
ここは治療者によっていろいろな考え方があるように思います。
ただ私はこんなふうに考えます。

もちろん可能であれば、「今はこんなふうに思っているんじゃないのかな?」とその気持ちを理解するように努め、「全部ではないかもしれないけれど、その気持ちをわかっているところもあるんだよ」と伝えたいと思います。
優しい言葉かけでその人の気持ちが癒され、よくなるのであれば、それが最も望ましいでしょう。
実際、医者もその方が楽なんですね。
しかし、病気の自己や偽りの自己にあまりにも支配された状態にあるときにはそれだけでは全く治療が進みません。

初めての診察で大事なのは、病気の自己が巻き込もうとするわなに決して引き込まれないことです。
拒食症への理解がないまま関われば、誰もが引きずり込まれてしまいます。
そして、その人がどれほど病気の自己に支配されているのかを見極めなくてはなりません。
病気の自己に支配されているレベルに応じて、治療の見通しや関わり方が全く変わってくるからです。
偽りの自己が演じる“いい子”の部分とだけ付き合って、表層的な“治療ごっこ”の治療関係に入ってはいけません。
本当の自己の目覚めに向けて病気を治す治療関係に一歩踏み込むことです。

「食事表をつけて何カロリーのご飯を食べるように」といった指導は二の次です。
その前に病気の自己との駆け引きに負けず、治療者の土俵に導くことです。
これが初めて診察に来て下さった方との治療で行うべきことだと思います。


本当の自分に目覚め、幸せに生きるダイヤモンドの心の医療