コラム

摂食障害における体重測定の技法③

2014年03月05日

体重測定の頻度はどの程度がいいのか?
毎日行うべきでないとしたら、週に1回?あるいは月に1回?

実は摂食障害の入院治療を行っているときに、月に1回の体重測定で治療を行ったことがあります。
もちろん、それは体重の数値へのこだわりを減らすためです。
しかし、いざ行ってみると、あるデメリットがありました。
それは体重を増やさないために「隠れて食べ物を捨てる」「隠れて過剰な運動をする」などの問題行動を行っているときに、体重という客観的指標がないと問題の可能性を指摘できないということです。
「私は絶対にやっていない」と言い張るときに、「体重に変化が見られない」とか「体重が減っている」ということは問題提起の材料になります。
その材料がないために、ただいたずらに治療を長引かせてしまうという問題がありました。

よって、結論としては週1回程度の体重測定が妥当だろうと思います。
ただ週1回の体重測定であっても、その評価の仕方には注意をしなければなりません。
まず、その測定数値を鵜呑みにさせないことです。
週1回の体重測定であっても、直前の飲物の摂取の有無、便通の状態、浮腫の有無などによる誤差があります。
そのため、ひとつには「500g以内の増減は“体重は変わらなかった”と判断する」という見方をすることです。
実際、100gの増減に一喜一憂するのが病気の心ですから、「500g以内の増減は増減と認めない」とすることで病気の心の動きを抑えるのです。
さらに念を押すなら、「体重の判断は1回の体重測定だけで判断せず、過去3回の平均値で判断し、平均値ごとの変化を見る」とするのが望ましいように思います。
過去3回の平均値をとることで1回1回の誤差を打消し、より正確な判断につなげることができます。

それでも、ひとつ知っておかなければならないことがあります。
普通に1500~2000kcalの食事をとっているだけで、1週間で2㎏、3㎏…、5㎏と体重が著明に増えることがあります。
この場合、まず間違いなく浮腫(ふしゅ。むくみ)があります。
要するに、いきなり食事をとり始めると体が適応できずにしばしば浮腫をきたすのです。
浮腫というのは体内にたまった水ですからね。
摂食障害の人が恐れている肉や脂肪ではありません。
一般に、きちんとした食事をとり続けていると1ヶ月もしないうちに尿となって排泄され、いきなり増えたと思った体重は下がることになります。
私の経験上、1週間で筋肉や脂肪として増加する体重は1.2~1.3㎏が限界だと思います。
それ以上の体重増加がある場合には、浮腫があるかどうかを確認し、正確な判断を下さなくてはならないと思います。


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