コラム

人を生かす反省

 反省の意味を広辞苑で引いてみると、「①自分の行いをかえりみること。自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること」、「 ②自己の内面的な精神生活または心的状態に意識とくに注意の作用を向けること」とあります。

 では、みなさんは反省と言えば、どのようなことを思われるでしょうか?

失敗や過ちを犯したときに「なんてことをしたんだろうか」、「お前は本当に自分のしたことをわかっているのか」、「十分に自分のダメさ加減を理解し、心から申し訳ないと思っているのか」、「仮に人に迷惑をかけたのであれば、相手が納得するまで謝罪はしたのか」こうしたことを自分に問い続けて、十分に落ち込み、嘆くことが反省だと思っていないでしょうか?少なくとも私はそのように思っていました。幼少時に親や学校の先生から「反省しなさい」、「本当に反省しているのか」と言われたとき、こんなふうに考えて自分を責め、ひたすらに申し訳ないと思い続ける。どこまで自分を責め、嘆き続けないといけないかはわからないけれども、少なくとも周囲からそうした雰囲気がなくなるまでは続けなければいけないのが反省だと思っていました。

 ちなみに、こうした反省によってもたらされるものは何でしょうか?
例えば、過ちを犯して人に迷惑をかけたとき、その過ちを犯した人がこうした反省をしている姿を見せると、迷惑をかけられた人はいくらか溜飲が下がるかもしれません。要するに、気持ちが少し軽くなったり、救われたりするかもしれません。ただ過ちを犯した人は自分を責め、ひたすらに申し訳ないと思い続けているわけですから、「自分はダメだ」、「自分なんていない方がいいんじゃないか」というような自己否定や「自分はなんて情けない人間だろう」というような自己卑下の意識が生まれてくるかもしれません。すると、苦しみや悲しみといった負の感情に侵されることになります。言い換えると、自らの心の中の闇を広げ、不幸の拡大生産をしている状態にあると言ってもいいかもしれません。
 
 この世界に生まれ、生きることに目的があるとすれば、そのひとつはいろいろなことを学び、成長することではないかと思います。正しく学ぶことで悩んだり、失敗したりすることが少なくなると次第に自分の心の中の愛や光が強くなり、軽やかに生きられるようになってきます。周囲の影響を受けることが少なくなり、自ら心を励まして光ある雰囲気を作れるようになり、その光ある雰囲気に周囲の人も惹かれ、いい影響を受け、心が照らされるようになります。

 そう考えると、最初に述べたような反省では自分の心の光を強めることも周囲の人の心に光を照らすこともできません。反省によって、なぜそうした失敗をしたのか、なぜそうした過ちを犯したのかを振り返り、それとともに自己憐憫などの負の感情に浸るのではなく、そうした失敗や過ちをしないで過ごす正しい方法を学ぶことです。学ぶことで一歩成長し、そうした一歩一歩を積み重ねることで、光に満ちた本当の自分に目覚めていくことです。

 相手に迷惑をかけたときには相手の気持ちを思いやり、心から「ごめんなさい」と謝ることは大切です。その一言で、相手の気持ちも救われることが多々あります。

 中にはなかなか人に謝れない人もいますが、謝るのはひとつの習慣です。普段から些細なことであっても自分に非があると感じられたときには勇気を出して「ごめんなさい」と言うように心がけていると、大事な場面でも自然と「ごめんなさい」という言葉が出てくるようになります。謝ることは情けないことでも自分の価値を下げる行為でもなく、自分の勇気を証明し、相手を思いやる気持ちからなされるすばらしい行為です。

 ただ一旦、謝ったなら、いつまでも申し訳ないと思って自分を責め続けたり、苦しみや悲しみの連鎖に陥って自己憐憫に浸ったりしないことです。そうした気持ちから光は生まれません。本当に申し訳ないと思っているのであれば、申し訳ないと思っているからこそ、辛そうな顔をしたり、悲しそうな顔を人に見せるのではなく、心の中では泣きそうになっても、人の心に光を与えるような笑顔を作ることです。そして、表情だけではなく、辛さを乗り越えて心から明るい気持ちを取り戻そうとすることです。

 当然のことながら、反省をしないで単純に笑って明るく過ごせばいいと言っているのではありません。反省をして、それとともに辛い気持ちになるかもしれないけれど、そこから学ぶことこそが大事なんじゃないかなということです。そして、学ぶべきことを学んだならそれでよしとして自分を許し、その後は反省しているからこそ、自分を鼓舞し、明るく振る舞うことが大事ではないかと思うのです。自分が反省することで、周囲の人まで暗い気持ちにさせてはいけません。それは反省というよりは、自己憐憫に浸って甘えているだけなのかもしれません。何度も言いますが、心から反省しているのであれば、自らの心に打ち勝って、今まで以上に光ある自分になろうとすることです。そして、周囲の人の心もその光で照らし、幸せの拡大生産をしていこうと心がけることだと思います。

月刊 『公営企業』 | 一般財団法人 地方財務協会
https://www.chihou-zaimu.com/koueikigyo