コラム

この悩みは誰のせい?

 今、あなたは悩んでいることがありますか?悩んでいるとしたら、それはなぜですか?誰かある人のせいでしょうか?それとも、自分自身の問題でしょうか?

 人のせいで悩まされるってことは誰でもありますよね。ときには、その人のせいでこんなに悩み、苦しまされるなんて、本当に許せない!どうしても納得できない!相手さえ変わってくれればいいのに!相手が心から謝罪してくれれば少しは気持ちも収まるのに!などといった思いが心の中を渦巻くこともあります。相手が悪いのに、自分がなぜこんなに悩まないといけないんだろう。相手が自分の問題に気がついて態度を変えてくれればいいのに、その期待とは裏腹に相手は全く変わってくれない。そうしたことはよくあります。

 ただ人のせいだと言って悩んでいる人の中に、実はその人自身の問題ではないのかと思うようなこともあります。そうした人は他の誰から何を言われようとも耳を傾けようとしません。「あなた自身の問題ではないのかな?」と指摘すると憤慨されます。ですので、賢明な人たちは「そうなんだね」「本当に大変だね」などとその人の気持ちに共感をしても、助言めいたことは何も言いません。その結果、その人自身は相談しても周囲には何も答えられないような役に立たない人間ばかりしかいないと思い、孤立するようになります。本当は自分自身の問題なんですけどね。悩みから脱するどころか、自分に問題があるので次から次へと不幸を呼び寄せるようになります。

 一方、この対極にあるような人もいます。何があっても自分のせいではないか、自分が悪いからではないか、自分さえいなければ誰にも迷惑をかけることはないんじゃないか…自分が悪いから相手にそんな態度をとらせるのではないかと思う人です。そうした人に「そんなことないよ。あなたは全然悪くないよ」と言っても、必ずと言っていいほど、「でも、私が……だから」と言われます。これは謙虚ではなく、自己卑下ですね。自己否定です。まわりの人が何とか励ましたいと思っても、「でも…」と言い返すのが習慣となってしまい、人の言葉を聞き入れる素直さがありません。ある意味、人のせいにする人と同じです。ですから、励ましても一時的にしか通じず、その励ましの言葉が本当にその人の心の中に入っていくにはかなりの時間がかかります。

 では、誰かのせい、自分のせいといった思考回路にとらわれている人が悩みから脱するにはどうしたらよいのでしょうか?

 相手に問題があるけれど、相手の態度が変わらない場合、相手に求めるのをあきらめるしかありません。「相手さえ…してくれれば」と思いたくなる気持ちは十二分にわかりますが、人って人に言われてなかなか変わりません。ですから、あきらめるしかありません。ただそれではなかなか割り切れませんし、悩みから脱することはできません。

 基本は「他人は変えられない。変えられるのは自分の心だけ」というのが原則です。まずは変えられる可能性のある自分を振り返り、「自分の心のあり方に問題はないだろうか」「自分の心の持ち方を変えることで、この問題から脱することはできないだろうか」という視点で見ることです。このときに自分を責めるのは絶対にやめましょう。それは自己否定に繋がって苦しくなるだけです。

 大事なのは「相手の問題であっても、自分の心の持ち方の問題として考えてみよう」という姿勢です。具体的にどうすればいいのでしょうか。それを一言で言うなら「自分を許し、自分を認めてあげる」ことです。難しいかもしれませんね~。どういうことかと言いますと、相手が変わらない場合あきらめるしかないのですが、そうは言っても心の中のもやもやは消えません。そんなときは自分の心に正直に「本当にあいつはなんてやつなんだ。あきらめろなんて言われても絶対にあきらめられないし、許せない。ああ、本当に腹が立つ!」などと叫んでみるといいと思います。ただ人前でやるとトラブルになったり、危ない人になったりしかねませんからね。人のいない自然の中か、防音設備のある部屋の中などで叫ぶ方がいいかと思います。その上で、「相手を許せない自分も、腹が立ってしまう自分も許そう。本当に自分はよく頑張っているよ。よくやっているよ」と言って自分を認めてあげることです。自分を責めてしまう人も同じです。「自分のせいだと思ってしまうよね。どうしてもそう思ってしまうのは仕方ないよね。でも、自分は悪くないらしいよ。よく頑張っているらしいよ」「私は私のままでいいんだよ」と自分自身に言ってあげることです。自分を責めているときは自分を認めにくいので、そのときには「らしい」という言葉を付け加えるといいかもしれません。また自分を肯定する言葉は、実際には全然そう思えなくても結構です。思ってなくても言葉に出して自分に言い聞かせ続けると、次第に本当にそう思えるようになってきます。

 人のせいだとか、自分のせいだとか言って、原因追及をしても苦しみの渦の中に巻き込まれていくだけです。基本的には「自分の心の持ち方をどうすればいいのか」という視点でとらえることです。人のせいや自分のせいだと言って苦しんでいる自分を許し、認めてあげることです。それを粘り強く何度も繰り返していると、次第に心が軽くなり、悩みの渦中から解き放たれ、新しい世界が開けてくるのではないかと思います。

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