人には「時間を無駄にしてはいけない」という考え方があるかと思います。休息も睡眠も必要だということはわかっていますが、必要以上に休息や睡眠をとるべきではなく、人生を有意義に生きるには時間を無駄にせず、効率良く行動しなければいけない。そのように考えている人は多くいると思います。
ですので、病院で「うつ状態」や「うつ病」と診断されて仕事を休むように言われても、ゆっくりと休もうとするより、ダラダラと休んでいてはいけないと思う人の方が多いかもしれません。人によってはやり残している仕事が気になって家のパソコンでメール処理をしたり、職場の人から自分が担当していた仕事関係の連絡があると相談を受けたりしている人がいます。それって休んでいるのでしょうか?確かに会社は休んでいますが、実際には休んでいませんよね?何よりもそんなふうにしていると心が休まりませんから、休みになっていません。
では本当に休んでいいのでしょうか?本当はもっと頑張るべきなのに、気を遣って休んでいいと言ってくれているだけではないのかと思っていないでしょうか? あるいは、会社を休んでも朝はちゃんと起きないととか、何もしないで過ごすのは良くないだろうからしんどくても本を読んだり、家事くらいはしたりしないといけないのではないかと思う人もいます。みなさん、もし40℃以上の高熱があってもそうしますか?高熱であれば体が動かないし、さすがに休まないといけないと理解できるかと思いますが、心の疲れとなるとわからないんですよね。どこかでさぼっているような気がするんですね。そうではありません。同じように休んでいいんですよ。いや、休まないと心の疲れはとれませんし、いつまで経っても回復しません。休むときには「~ねばならない」と思うことを一切やめて、とことんダラダラして休んでいいんですよ。そうすることが必要なんです。
ただここまで話しても「でもやっぱりダラダラしていたら、よくないんじゃないか。そんなことをしていると本当にダメになってしまうんじゃないか」と思う人がいます。人ってよほど現実から逃避する必要がなければ、いつまでもダラダラすることなんてできないものです。ダラダラできるということは、休むことが必要なんです。今の自分には休むことが必要なんだと肯定して休むことです。
では、そんなふうに休んでいると人生が無駄になってしまうでしょうか?休むべきときに休まずに頑張っていると、「自分は無理をしてよく頑張っている」という実感はあるかもしれません。ただ後になってみると、それだけ努力して頑張っても思ったほどの結果が残らないことはよくあります。一方、思い切って休んでも意外と何も困ることはなくて、上手くいくということはよくあります。不思議ですが、そんなものかもしれません。
では、休むことがなぜ大事なのか、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。みなさん、一昔前はしんどくても無理をして努力して頑張ってこそ成功するんだという考え方が主流だったかと思います。確かにある意味、その通りだったかもしれません。ただその成功した人たちの日々の人生が本当に幸せだったかどうかというと、それはわかりません。事業において成功しても、その一方で、家庭が崩壊して孤独な人生だったということもあります。「最高の人生の見つけ方」という映画で、ジャック・ニコルソンがそうした男性を演じていましたね。経済的に豊かになって有名ブランドで身を飾り、幅広い交友関係があっても、実は心は満たされていなくて、いつも誰かに認めてもらえる世界を求め続けているだけかもしれません。
本当の幸せとは、どのような1日1日を過ごしているかということではないかと思うのです。そのときに大切なのは、心に余裕があることです。無理をして頑張ってもイライラしたり、不安や焦りを抱いていたり、エネルギーを消耗しきったりしていては幸せとは言えません。軽やかな気持ちでいることも大切です。頑張るのはいいのですが、何かひとつのことにこだわり過ぎるといつの間にか気持ちが重くなっていることがあります。こだわりながらもそれを楽しんでいればいいのですが、いつの間にか気持ちが重くなっていることがあります。「今の自分の気持ちが軽いか?重いか?」という基準で自分を振り返ることはあまりないかもしれませんが、気持ちが重いと幸せではありませんよね?
この「心に余裕を持つ」「気持ちを軽くする」ということに対して必要なのが休むということです。休んでいると人生の効率が落ちて本当の成功がつかめないとか、休むのは自分が弱くて甘えているだけでもっと頑張らないといけないとか、そうした考え方は私たちが求めている幸せに繋がりません。これからは幸せに繋がらない成功を求めるよりも、1日1日の幸せを求める時代ではないかと思います。しんどくなることから離れて、心から休むというのはとてもいいことなんです。そんなふうに考えて過ごせる人は、人に対しても「休んでいいんだよ」「無理せず、自分にもやさしくしてあげることだよ」という言葉をかけることができます。するとまわりの人も気持ちが緩み、自然と笑顔が出てくるようになります。「あなたと話すといつも気持ちが楽になる」って言われるようにもなります。ほらね、そうした自分の心も人のも心もをゆるませられる瞬間が、そんな1日1日が幸せではないでしょうか。