コラム

いかにして拒食症の治療をスタートするか?④

2014年01月22日

「あきらめない」「見切らない」そんな治療者であっても、治療のスタートにあたって限界を感じるときがあります。
それはその人にかかわる家族が理解を示してくれないときです。

拒食症は難しい病気なので、家族の方の「かかわり方がわからない」というコメントは当然のことですし、仕方がありません。
非常に厳しく感じられるのは、心の防衛反応による否認のためでしょうか、病気の重大性を理解しようとされない家族の方です。
あるいは、治療者の方針に耳を傾けようとされず、自分の考え方ややり方を押し通そうとする家族の方です。

例えば、「命にかかわるほど危険な状態なので入院が必要だ」という話をしているとしましょう。
多くの場合、家族の方も一緒になって本人を説得し、入院させようとします。
しかし、「入院するかどうかは本人の気持ちに問題ですからね、本人に任せます。それよりも、この子は頭が痛いと言っているので、それを何とかしてやれませんか?」というような返事がされる方がいます。
命にかかわるほどに危険な状態であるときに、淡々と「本人の気持ちの問題なので任せます」ではないでしょう?
頭痛を和らげてあげることも大切ですが、今は頭痛よりももっと重大な問題があるのですよ。
そんなふうに言いたくなります。

あるいは、「食事のことについて本人には一切、言わないようにしてくださいね」と話しても、目の前の食べないという行為に納得できずに本人を怒られる方がいます。
本人が決死の思いで食事をとろうと努力しているときに、責めるような言葉を発されると、本人の頑張りも限界を超えてしまいます。
いくら診察場面でリセットしても、家に帰るたびに悪い意味のリセットをされてしまうと、治療は進みません。

家族が病気のことを理解できないのは仕方ないことなのですが、理解しようとして下さらない場合、それが治療の限界になることがあります。
理解されない方というのはこのコラムを見ても、読み流されてしまい、何の感想も持たれない方です。
もし、ここに述べていることを読んで「私は大丈夫かしら?」と心配される方は大丈夫です。
そのように思う姿勢が本人のことを理解しようとしている証拠です。


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