コラム

摂食障害における体重測定への考察

2014年02月27日

摂食障害治療における体重測定については、いろいろ考えることがあります。

まず体重測定が必要であるか否かという問題です。
結論から述べるならば、基本的には体重測定を行った方がいいと思います。

それはいくつかの理由によります。
ひとつは拒食症であれば、極度の低体重は生命の危機につながります。
その場合、生命的な危険性の指標として体重測定を行うことが望ましいと思います。
また体重測定は本人の食事への取り組み具合、過活動などの問題行動の有無の目安になります。
病状の重い人ほど診察場面では自分の病的な問題行動を語ることができず、隠そうとします。
しかし、体重という指標があればそこから問題行動を推察することができます。

一方、「どうしても体重測定はしたくない」という人がいます。
「体重が気になるのが嫌で家でも体重を測るのをやめたから測りたくない」という人ですね。
これは確かに一理あります。

以前のコラムでも書いたように体重測定は病気の自己を刺激する最大の要因ですから、それをしないというのは納得できる部分があります。
ただ先に述べたように診察時の体重測定についてはそれなりの意味があるので、それをしないリスクについては理解してもらう必要があります。
また、体重測定をしなくてもウエストなどの感覚で体重を判断することがよくあるので、その問題点についても理解してもらう必要があります。
その上で治療に臨まなくてはなりません。

おそらく体重測定を行わずに治療を行う場合は、治療者にかなりの経験が必要でしょう。
私も本人の希望で体重測定を行わずに治療を進めることがありますが、その場合は様々な角度から細心の注意を払いながら行っています。
でなければ、摂食障害の人が病気の自己にとらわれる部分を見過ごし、ある意味、病気の自己に欺かれる可能性があります。
すなわち、治せなくなるリスクが大きくなります。

結論としては、体重測定をせずに治療を行うことは可能であるし、その理屈にも一理あります。
ただ病気の自己に一切の隙を与えずにその行動を完全に遮断し、摂食障害を克服していくためには体重測定を行う方が良いように思います。


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