コラム

摂食障害の入院環境についての考察

2014年02月12日

摂食障害の入院治療を考えるにあたって、病院がどれだけの入院環境を整えているかを知ることは重要なことです。

ある先生は内科的治療が必要なときだけ入院治療をさせると言われます。
内科的治療だけを行うとすれば、入院環境による治療レベルの差はあまりないように思われます。
よって、どこの病院に入院をしても大差はないのではないかと思います。

しかし、純粋に摂食障害の治療を行おうとすれば、治療環境の差は歴然としたものがあります。
入院治療するということはほとんどの場合、本人自身がコントロールできない問題行動がかなりあるということです。
ですから、
『本人の行動を見守ることのできる治療環境』
が必要になります。
しばしば閉鎖病棟が必要になるでしょうし、ときにはあらゆる問題行動をシャットアウトするための個室が必要になることもあるでしょう。
そうすると基本的には精神科病棟になります。
しかし、安心できる環境が望ましいですから、純粋の精神科病棟だと摂食障害の人にとっては落ち着かないといったこともあるでしょう。
もし、一般病棟で治療を行う場合には、入院によって“医者や看護師の目があれば自分をコントロールできる”ということが条件になります。

さらに重要なのは、
『摂食障害のことを理解するスタッフの存在』
です。
摂食障害は非常に難しい病気ですから、スタッフが摂食障害のことを理解ができないと患者様に陰性感情をぶつけてしまったり、自ら疲弊してしまったりします。
であれば「スタッフは勉強すればいいじゃないか」と思うのですが、現実には本当に患者様のことを思い、勉強しようとする人は非常に限定的です。
自分たちの持った能力だけで対応しようとして混乱を招き、その末に「摂食障害の人はうちの病棟ではみられません」といったことを言われるのです。

私自身も大学病院、精神科病棟を持った総合病院、一般病棟のみの総合病院などを経てきました。
しかし、いずれにおいても治療環境に限界を感じ、「もっとよい治療環境さえあれば治る可能性があるのに…」と思い続けていました。

そんな思いを初めて打破してくれたのが、開業前に勤務していた思春期病棟を持った病院でした。
ここの病棟は他の精神疾患の患者様もおられましたが、基本的には思春期の年頃の人が中心で、摂食障害の人にとっても違和感のない病棟だったと思います。
ただスタッフが摂食障害を本当に理解するまでには、一人の患者様と徹底的に付き合い、乗り越えたという経験が必要だったように思います。
ここでは栄養士も積極的に治療に携わって下さり、国内でも屈指ではないかと自負できるような治療スタッフがそろっていたように思います。
実際、この病棟では数々の難治例の摂食障害の人の治療に取り組み、何人もの人が奇跡的な回復をしました。

しかし、こうした病院は国内ではまだごくわずかです。
国内では摂食障害専門の治療施設の建設も検討されていますが、まだもう少し時間がかかりそうです。
よってまだまだベストとは言えない入院環境の中で試行錯誤を繰り返しながら、治療を行っているのが現実です。
中には、入院をしてもあまり治療効果の上がらない施設もあるでしょう。
大部分はある程度までの成果を上げて、あとは通院治療と入院治療を繰り返しながら、フォローするというのが現実でしょう。
このように摂食障害治療の入院環境は厳しいのが現実だと思います。


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