コラム

摂食障害治療の最大の敵➀

2014年02月14日

摂食障害治療を始めるにあたって、私が課す最初の課題は「食事表をつけなさい」といったことや「何キロカロリーの食事をとりなさい」といったことではありません。
『家から体重計をなくして下さい』です。
この課題は本人たちにとっては思わず「えっ!」と思うとともに、「厳しいところをつかれたな」と思わせるものです。

実は摂食障害治療にあたって最大の敵は『体重計の数字』なのです。
家に体重計がある限り、ほとんどの治療は成功しません。
なぜでしょうか?

もし、診察を受けて「よし、今日からは頑張って食事をとるようにしよう」と思ったとします。
それは、その人の心の奥にある本当の自己が刺激されて、病気の自己に打ち勝とうとする思いを持てたということです。
しかし、家に帰って体重測定をして「前よりも100g増えていた」と思った瞬間、その思いは一瞬にして消えてしまいます。
病気の自己が刺激され、本当の自己が圧倒されるのです。
要するに、食事をとるのが怖くなって「やっぱり食べないようにしよう」「やっぱり吐いてしまおう」という気持ちが湧きあがり、再び食事をとることができなくなるのです。

治療者は本来、本当の自己の支援者であり、本当の自己の力を呼び覚ますように診察を行います。
(“本来”と述べたのはもしかすると、そうした診察を行えていない治療者がいるかもしれないからです。
もし、本当の自己を支援する診察を行えていないなら、それはきっと治療になっていないのではないかと思います)
一方、病気の自己の最大の支援者こそが『体重計』なのです。
ですから、家から体重計をなくさない限り、治療が進むことはありません。
1回の診察も1回の体重測定で帳消しです。
いや、1回体重測定をしてしまった人は次の診察までに何度も体重測定を行いますから、その間にどんどん病気の自己が強化されてしまいます。
これでは勝負になりません。

よって、摂食障害治療のファーストステップは
『家から体重計をなくして下さい』
でなくてはならないのです。


本当の自分に目覚め、幸せに生きるダイヤモンドの心の医療