コラム

【うつ病】薬物治療について③-「うつ病への対応⑦」-

2013年11月11日

薬物治療について③-「うつ病への対応⑦」-

薬の量に関する疑問について、さらに話を続けたいと思います。

一般に患者さんの立場に立てば、薬の量はその錠剤の数で判断します。
患者さんだけでなく、内科医をはじめとする殆どの医者も同様です。
しかし、こと精神安定剤においてそれは正しい判断でしょうか?

こんなエピソードがあります。
以前、統合失調症の患者さんの薬物治療で、どんなお薬を飲んでもらってもなかなかよくならないということがありました。
あまりにも効果がないので、採血を行うことにしました。
その患者さんの体内の薬の血中濃度を調べたのです。

例えば、ハロペリドールというお薬であれば、3~17の範囲の血中濃度が治療の有効域となります。
すなわち、3~17の範囲に達していれば、症状が改善する可能性が高いということです。

しかし、この患者さんの場合、5錠のお薬を飲んでいたにもかかわらず、血中濃度を調べると、1.8しかありませんでした。
要するに、薬が全然効いていなかったのです。
結局、1日に20錠くらいの大量のお薬を飲んでもらうことにしました。
それで血中濃度はようやく9になったのです。
治療効果が表れ始め、それまで全く改善しなかった精神症状が徐々に落ち着いてきました。

普通は5錠のお薬飲んでいれば、血中濃度10~15くらいにはなります。
しかし、この人の場合は1.8しかなく、15~20錠飲んでようやく9なのです。
つまり、薬の量というのは、こと精神安定剤においては必ずしも錠剤の数で判断できないのです。
同じ錠剤の数であっても、体内の吸収には差があり、血中濃度が違ってきます。
薬の量の多寡を判断するのは錠剤の数ではなく、血中濃度なのです。

残念ながら、血中濃度を測ることのできる精神安定剤はごく一部に限られています。
ただ殆どの安定剤において、この原理は当てはまるものだと思います。
ですから、薬の量が気になっても、錠剤の数だけに惑わされないことです。

前回も述べたように、病気を治すのが大事なことであり、そのために必要な量の薬を内服することです。

 


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